文章をダメにする三つの条件


著者:宮部 修  出版社:丸善ライブラリー  2000年9月刊  \693(税込)  166P


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昨日に続いて、文章術の本です。


奇しくも『ホンモノの文章力』と同じく8年前の本です。興味のある文章講座の本とはいえ、新刊本でもないこの本の存在を知ったのは、書評ブログ「情報考学」の10月27日の記事でした。
「まだまだ私の文章修行は続く」との結びのことばを読み、1900日以上もブログを書き続けている橋本大也さんが共感したのはどんな本なのだろう、と手を伸ばしたのです。


宮部氏は、文章には書いた人の人間性が表れる、という信念から、“技巧”や“気どり”を捨てなさい、3つの悪い傾向をまず排除しなさい、と指導します。共感できない、退屈する文章は、一般論や理屈をこねくりまわすのが原因なのだ。「書き手自身にしか書けないこと」を書きなさい! と強調するスパルタ教育です。


学生の書いた作文の添削がよほど辛かったようで、本書の「はじめに」でもう怒っています。


内容がありきたりのくせに、気取った文章を書いてはいけない。
そのために、3つの禁止事項を守りなさい。
自分の体験を細部にわたり具体的に思い出しなさい。


おお、こわ!


ちなみに、宮部氏の禁止事項は、つぎの3つです。
  (1) 文章の意図がつかめない事実や印象の羅列
  (2) 読み手が退屈する理屈攻め
  (3) 読み手の興味をひかない一般論


名文を引用してお茶をにごす文章読本とちがい、悪文の実例をどんどん載せているのも怒りの表れでしょうか。
大学のオリエンテーションの様子を書いた学生の作文のうち、まず退屈な悪い作文例を示したあと、宮部氏が感心した例として、オリエンテーションでの礼拝を「キリスト教洗脳プログラムと感じた」という作文を取りあげていました。


ユニークな視点でたしかに面白いかもしれませんが、大学に入ってすぐに母校の方針を批判する内容を指導教官に提出するというのは、はたして「アリ」なんでしょうか。
いくら自由に書いてよいとはいっても、やっぱり書いていいことと、悪いことがあるよなぁ……。と、常識的な発想をする人もいるでしょう。
しかし、こんな人は、きっと宮部氏にしかられます。


何を言っているんだ!
「書き手自身にしか書けないこと」を書きなさいと言っているじゃないか!
まだ分からないのか!!


なにしろ、「初体験、堕胎の瞬間を静かに見つめた作文」を「そこまで書く当世学生気質にやや驚かされたものの、個人的には嬉しくもあった」と評価する鬼センセイです。
気どりを捨てなければ、よい文章は書けません。


叱られてもめげないタイプ、叱られると喜ぶタイプでなければ、第2章の「基本・プラスアルファー」まで行き着くのは難しいかもしれませんよ。


親切にやさしく教えてくれるホトケの樋口氏か、それともオニの宮部氏か。


あなたは、どちらでしょう。