副題:大切なことに気づく45のメッセージ
著者:中島 未月 (なかじま・みずき) /文 谷山 彩子 (たにやま・あやこ) /絵
出版社:リヨン社 2008年6月刊 \1,050(税込) 111P
このブログで450冊以上の本を紹介してきましたが、今日は、はじめて詩集を取り上げます。
ふだん私が読んでいる本は、散文ばかりです。
さいごに詩集に接したのは、20代で読んだ『一握の砂』だったかなあ。
どうして読まなくなったのか。
だって、「詩」って緊張するんだもん。
詩人は説明や理屈を話してくれず、はだかの心で読むことを要求します。
「私はこう感じる。あなたは、私の感じ方をどう思うのか?」って迫られている気がするのです。
しかし、本書は違いました。
たぶん、著者の中島さんの人柄なのでしょう。
メッセージが押しつけがましくありません。
といって、弱々しく独り言をつぶやいているのでもありません。
朗らかに、時にしっとりと、「好き」という気持ちの大切さを教えてくれる。「好き」という気持ちが私たちの生きる力の根っこになっていることを諄々と説いている中島さんの文章は、「凜」ということばが似合います。
中島さんのメッセージの多くは、五行歌という形式にまとめられています。
五行歌って、どんな詩を指すかご存じですか。
もう20年以上も「詩」に接していない私は、もちろん分かりません。ウィキペディアで調べて、五行歌とは五行で一作品にまとめる短い詩のことを指す、と今回知りました。
五・七・五のような文字数の規定はなく、行分けによる呼吸論に基づいているそうで、昭和生まれの草壁焔太(くさかべえんた)という歌人がちゃんと創始者として認められています。
中島さんは、この「五行」という形式で、「好き」という気持ちからはじまる安心としあわせの世界を表現しました。
ああ、そうなんだ。
そういえば、「好き」って命のみなもとみたいなものだったなあ。
でも、こういうことをストレートに言えるのは、やっぱり女性的感性なのでしょう。
たとえば、「ふりかえる」と題した次の作品。
ふりかえるのは
後悔する
ためでなく
わたしを
省みるため
同じことでも、男はつい「人生の全ては過去の蓄積の中にある」なんて書きたくなってしまう。
それを中島さんは、身体の奥底から、心の深いところからことばがあふれるのを待って、5行にまとめました。
もうひとつ、「好きな道」という作品を引用します。
正しい道
なんて、ない
歩いた道を
好きになれば
それでいい
男は、「正義」とか「大義」とか口にしたがります。
男ってダメだなあ、と素直に思う。
やっぱり、命をはぐくむ性にはかなわないのかなあ……。
生きる力が少し弱くなった気がするとき、
人と会うことが少しつらくなったとき、
中島さんのことばに触れると、きっと元気になれます。
だって、中島さんは、「好き」という気持ちの不思議な力を知っているから。
書籍ご案内ページ、著者ブログ・メルマガのお知らせ
本書の出版にあわせて、書籍ご案内ページが公開されています。
こちら を覗いてみて、とても雰囲気のある予告ムービーを見つけました。ピアノ音楽のBGMに乗せて、本書所収のいくつかの作品が読めるのです。
新刊のキャンペーンというと、通常は、発売と同時にともかくたくさん買っていただくことを目的にしています。
中島さんがすごいのは、そんなに急いでいないことです。
ページを見て、気に入ってくださった方の口コミで……。
本を手にとって、共感してくださった方のご紹介で……。
少しずつ、ゆっくりと、広がってくれる本になれたらいいな、
と、願っています。
(中略)
ひとりでもたくさんの方に、
「好き」と「しあわせ」の輪が広がることを願いつつ──。
私のブログ読者の皆さまにも、「好き」と「しあわせ」の輪が広がりますように。
また、中島さんは、「はれ、ことば」というブログ・メルマガを発行しています。
日々の暮らしの中で感じるしあわせの瞬間を五行歌とエッセイで綴っていますので、本書の雰囲気を味わえますし、本書の続きを読むこともできます。
(ブログ「はれ、ことば」はこちら、
メルマガ「はれ、ことば」はこちら)
ご参考まで。