著者:小飼 弾 出版社:技術評論社 2008年5月刊 \1,554(税込) 238P
むかしむかし、僕が共立出版のbitというコンピュータ雑誌を愛読していた四半世紀前のこと。コンピュータ技術に精通した人のことを、尊敬の念をこめて「ハッカー」と呼んでいた。その後、コンピュータの知識を悪用する人も「ハッカー」といっしょくたに呼ばれることが多くなって、いつのまにか「ハッカー」は死語に近くなる。
「ギーク」という言葉は、梅田望夫氏の著作ではじめて目にしたが、かつての「ハッカー」と同じような意味だと理解している。
かたや「アルファ」は「アルファブロガー」に登場する「アルファ」。動物行動学でリーダーとなる個体のことを指すそうだ。
だから「アルファギーク」というのは、「ハッカーの中でも、先駆者となる人」「最先端のプログラマー」のこと。
自身も「アルファギーク」を自認する小飼弾氏が、ウェブの世界で先駆的プログラマとして有名な人々をインタビューしたのが本書だ。
話題が話題だけに、IT業界の人間にしか読まれなさそうな本なのに、さっきアマゾンの売上ランキングを覗いて見てみたら「本で285位」と健闘している。小飼弾氏は『404 Blog Not Found』というブログを書いている「アルファブロガー」なので、多くの小飼ファンが買い求めているに違いない。(小飼氏自身も自分で内容紹介のエントリを書いている)
しかし、本書の内容は徹底的に尖ったエンジニアを相手に書かれており、業界外の人には何が何だか分からない話だろうし、ページ下の注記を読んでますます混乱するかもしれない。
僕自身はどうかというと、少しは分かった気がする、という読者レベル。受託開発ソフトをとりまとめるSEだったので、あまり最先端の話題に着いていく必要がなかった。枯れた技術を中心にしてソフトウェア作成を行い、少しだけ先進的な取り組みができればうれしい、という立場だった。本書に出てくるような、産業を変化させる力を持つかもしれないエンジニアというのは、遠いあこがれの世界に住む人だ。
そんなギークたちと対等に対話し、時に逆インタビューされる小飼氏は、ものすごくカッコ良く見える。
株式会社はてなの近藤社長夫妻と小飼夫妻の夫婦対談や、「きたみりゅうじの小飼弾に逢ってきた」で小飼氏の日常生活や経歴を知ったが、やはり常人ばなれしていた。
普通の人に真似できない人だし、よい子が真似をしてはいけない人。それが分かったのが本書の一番の収穫かな。
尚、僕の愛読するブログ『マインドマップ的読書感想文』の著者smoothさんは税務・会計を本業とする非IT業界人である。そのsmoothさんがIT業界人以外でも本書を楽しむ読み方を4月20日のエントリ「文系のアナタに贈る「小飼弾のアルファギークに逢ってきた」の読み方」で披露している。ご参考まで。
おまけ
僕もIT技術者のはしくれなので、仕事に関係なくJavaScriptを書いたりする。
たくさん本を読む人が、自分の読んだ本の一覧をExcelで整理したいときに便利だと思う。
題して「本の情報を記録する」ツール。お時間のある人は、こちらをお試しあれ。(IE6.0で動作確認済)