情報は1冊のノートにまとめなさい


著者:奥野 宣之  出版社:ナナ・コーポレート・コミュニケーション
2008年3月刊  \1,365(税込)  229P


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どこかのお店の電話番号を調べるとき、我が家では「よーいドン!」のかけ声とともに、私はパソコンで、カミさんは電話帳で探しはじめます。


「勝った!!」
高らかに勝利宣言するのは、たいていカミさん。
パソコンの電源を入れるところからスタートすると、ほぼ8割は私の負けで、たまたま電源が入っていても、勝率4割というところです。グーグルやインターネットタウンページを使っても、やはり引きやすい電話帳に負けてしまうのです。


まだまだ、デジタルよりアナログのほうが優れていることが多いなあ。


そんな実感にぴったりの本に出会いました。
それが、この『情報は1冊のノートにまとめなさい』です。


著者の奥野さんは業界紙の記者です。
取材メモの整理と原稿作成に苦労しながら自分なりの工夫を重ねた結果、奥野さんは「一冊にまとめるほうが、結局うまくいく」という結論に達しました。


最近バカ売れしている勝間和代さんは「すべての情報をノートパソコンに入れる」と提案していますから、真っ向からぶつかるご意見ですね。
さらに奥野さんは「これまでの情報整理術ではうまくいかない」とたたみかけ、その理由を「マネできないから」とバッサリ切り捨てました。


これは痛快!!
でも、いいんですか奥野さん。こんなこと言っちゃって。


「いいんです!!」と言わんばかりに奥野さんは続けます。

 まず、成功者や組織のリーダーは特別に自律心が強い。
 彼らはとにかく、コツコツ努力することに慣れっこです。慣れすぎて、もう頑張るのが息をするのと同じだから「簡単です。誰でもできますよ」で済ませてしまう。(中略)コツコツ努力できる人の方法をいきなりマネすると、大きな苦痛が伴うのです。


というわけで、本書は成功者や組織のリーダーのように特別な人でなくても、誰でもできる! 方法を提案しています。


その方法は、「A6サイズのノートに何でも書く、何でも入れる」ということです。
誰と会ったか、どんなことを話したか、旅行先の印象、思いついたアイデア、スケジュール予定、写真・切り抜き・レシートの貼付け、今度読みたいと思っている本のタイトル、見た映画の感想、……etc.
なんでも、ぜ〜んぶ入れておく。
ついでに、サイフやケータイを忘れた時のために、ポケットを作って千円札数枚とテレホンカードを入れておく。(いまどきテレカかよ!! とつっこんではいけません)


何でもかんでも放りこむと言うと何の工夫もなさそうに聞こえますが、そこは情報整理で苦労した著者です。放りこ込みかたに工夫があるのはもちろん、後で書いた物、貼ったものを参照しやすいように、何年何月何日にどんなメモを書いたかをパソコンで整理しておく、というデジタルとアナログの融合を提案しています。


これ、使えそうですよ。


私も仕事関係で会議をしたとき、参加者とだいだいの話の内容を1冊のノートにまとめています。たいていは後で正式議事録が配られますが、議事録を読み返すのは「言った」「言わない」と紛糾したときだけで、ふだん見返すのはこのノートだけで充分です。
会議中に自分のノートパソコンに打ち込んでいる人をよく見かけますが、けっこうデジタル人間の私でも「もっと議論に集中しろよ!!」と言いたくなりますから、やはり完全デジタルには、無理が多いようですね。この本を読んで再認識しました。


本書のメインテーマから外れたところで、私が深く納得したことがひとつ。
奥野さんが何でもノート書き込む内容のひとつに「日記」があります。日記には記録としての役割の他に、自分を見つめ直すことができる精神安定作用があります。
昨今はブログや「ミクシィ」のようなオンライン日記が盛り上がっていますが、外部の目を意識するので、なかなか正直な感情を書けません。ですから記録にはなっても、精神安定作用の効能から見ると、オンライン日記は「紙の日記」の代わりにはならないと奥野さんは指摘しています。
「僕は近いうち、ブログのブームも終わりを迎える気がしています」という、驚くべき予想まで述べていますよ。


う〜ん。僕のブログはどうだろうな〜。


最後に、本の装丁についてひとこと。
大学ノート風に手書きで「情報は1冊のノートにまとめなさい」というのは、一風変わっていて、とても目立ちます。この表紙に100円玉のイラストつきの帯(以前とちがい、最近のアマゾンでは帯つきの表紙を掲載しています)もインパクトがありますが、カバーをはがしてみると、ちょっとした驚きが待っていました。


たいていのソフトカバーの本というのは、カバーをはがしてもカバーと同じデザインがモノクロで印刷しているだけなのですが、この本は……
なんと!! 大学ノートの表紙そのもの。何の文字も書いてありません。
カバーを取ってしまうと、ちょっと分厚いB6サイズのノートのようです。


好きだなぁ。こういう遊びごころ。