グローバルで成功するプロの仕事術


副題: 日本企業のアメリカ進出を支えたトップコンサルタントの方法
著者:内田 士郎  出版社:祥伝社  2007年9月刊  \1,470(税込)  250P


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ココロにしみる本を求めている私にとって、ビジネス書やライフハック本、勉強本は、あまり得意ではないジャンルです。タイトルに惹かれて手にとってみるものの、途中で投げ出してしまうことも多いのです。


世の中に氾濫しているこの手の本の著者は、ほぼ100%がベンチャー企業社長やコンサルタントの肩書きを持っています。内容は仕事のしかたや効率アップの参考になるものの、「勝ち組」の著者が誇らしげに自分の仕事術を自慢する嫌らしさが鼻についてしまいます。


本書も、きっと鼻持ちならない著者が書いているに違いありません。
著者プロフィールを見ると、思った通り。公認会計士の資格を持った外資系会計事務所の日本法人社長です。


実はこの本、昨年9月に出版社さんから贈呈いただいたのですが、なかなか手が伸びずに、本棚の奥へ奥へと移動してしまいました。
先週、あらためて読みはじめてみると、予想していたようなイヤミがありません。華々しい経歴から受けるスマートな印象とちがい、体育会系出身者のように愚直で、不器用で、泥臭い著者の息づかいが伝わってきます。


4ヶ月も放置して、もったいないことをしました。
あらためて紹介させていただきます。


著者の内田さんは早稲田の政経学部を卒業していますが、学生時代に露天商ビジネスにハマッていたおかげで成績がボロボロでした。


そのまま希望にそわない就職をしても長続きしないだろうと思い、内田さんは、起死回生の大バクチに出ます。
それは、難関の国家資格、公認会計士試験を受験することでした。


卒業後2年で二次試験合格を勝ち取った内田さんは、合格発表を見たその足で外資系会計事務所の面接をうけて採用されます。
会社員となってからの内田さんは、全力で仕事に取り組む生活を続け、アメリカへの転勤、華々しいヘッドハンティングを経て、13年ぶりに日本へ帰国。
現在は、ベリングポイント社という外資系会計士事務所の日本法人社長を務めておられます。


本書で内田さんは、自身の仕事経験を基に読者に向かってアドバイスをしていますが、やはり一番の魅力は、全力疾走してきた著者の記録そのものです。


内田さんの座右の銘は、「至誠天に通ず」。
ギブ・アンド・テイクではなく、ギブ・アンド・ギブで相手に尽くし抜く。自分にできる精一杯の正しいことをやるように心がけていれば、必ずお客様に通じる。
そう信じているのです。


そんな内田さんですので、時には、お客様の理不尽な要求に「ノー」ということも恐れません。
たとえば、コンサルタント料金を値切られたとき、次のように心情を吐露しています。

  物は値切れば、その分、同じ商品が安く買えますがから
  得をしますが、サービスは値切ればその分、質が落ちます。
  サービスは物ではありません。人がやるものであり、感情
  で動く部分が大きい
からです。(太字は原文のまま)


また、効率や段取りよりも重視しているのが、諦めずに最後まで集中してやり遂げることです。他人の倍かかってもいい、という指針がエリートビジネスマンから聞けるとは思っていませんでした。


グイグイと自分の仕事術を披露したあと、内田さんは急にトーンを落として、学生時代の思い出を語りはじめました。「会計士をめざしたほんとうの理由」に、ちょっとだけジーンときました。


もっと熱くなれ!
著者のパワーが伝わってくる一書でした。