水戦争


副題:水資源争奪の最終戦争が始まった
著者:柴田明夫  出版社:角川SSC新書  2007年12月刊  \798(税込)  202P


水戦争―水資源争奪の最終戦争が始まった (角川SSC新書)    購入する際は、こちらから


本書は、「安心してはいけない。日本も世界的水不足の影響を受けつつあるんですよ」と教えてくれる警告書だ。


「水資源」とも呼ばれるように、水は重要な資源のひとつで、地球規模で見ると偏った存在だ。でも、「豊葦原瑞穂の国」とよばれる日本は、水に恵まれた国。そんなの関係ない、と思っていた。
しかし、日本が実は水資源の輸入国! と言われると驚きが走る。


キーワードは「バーチャルウォーター」だ。
この耳慣れない言葉は、実は1990年代前半から使われている言葉で、農産物を作るのに大量の水を使うのだから、農産物の輸入・輸出を「水」の貿易関係として捉える考え方を指している。
国連が算定した「バーチャルウォーター」の表によると、小麦1キロを生産するのに1,150リットルの水が必要で、コメは2,656リットルである。大量の水を使って育てた牧草や穀類を与えて作る牛肉は15,977リットルと1桁多い。


食料輸入の多い日本で、このバーチャルウォーター総輸入量を算定してみると、650億立方メートル。(2000年の貿易量で算出)国内の年間の灌漑用水の使用量が570億立方メートルというから、バーチャルウォーターの輸入の方が国内で食料生産に使われる水より多い計算になる。水資源で見ても、日本は自給率5割を切っているのだ。


大量の水資源消費国として日本は今後どうすべきか、という処方箋も用意されているが、残念ながら、長期的で地味な対策が多い。
ともあれ、「日本は水不足なんだ〜」と認識を新たにさせてくれるだけでも価値ある一書である。