幸せさがし


著者:鎌田 實  出版社:朝日新聞社  2007年9月刊  \1,260(税込)  228P


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私の大好きな鎌田先生の本をまた読みました。
本書は『週刊朝日』に2005年5月〜2006年12月まで連載した「がんばらないけどあきらめない」というエッセイの一部を、大幅に加筆改稿して構成しなおしたものです。


この1年半のあいだに、鎌田先生はいろいろな人と出会い、相手の生き方に感動したり、一緒に何か行動を起こしたり、お互いに励まし合って生きてきました。
その出会いのエッセンスを、鎌田先生は毎回「幸せさがし」のヒントとして教えてくれます。


たとえば、左手だけでピアノを弾く舘野泉さんという世界的ピアニストと会ったあと、次のように教えてくれます。
  幸せさがしのヒントがひとつ見えてきた。
  大切なものを失っても、病気になっても、幸せを見つけることはできる。
  間違いない。欠点をひとまず横に置いて、長所を伸ばそう。


また、ある生命保険会社で特別に優秀なセールスレディ(しかも親子3人)と食事をして、すご腕の秘訣を聞き出したあと、鎌田先生は次のように幸せのヒントを導きだしていました。
  幸せになるためには、相手に対する想像力、共感力が大切。
  これがあればあなたは一流の仕事人にもなれる。幸せにもなれる。


印象的だったのは、鎌田先生がほかの人にお願い事をした話と、お願いごとをされた話の類似点でした。


2005年の秋、ベラルーシの病院でジャズトランペット奏者の坂田明が「ひまわり」という曲を吹きました。大きく心を揺すぶられた鎌田先生は、ベラルーシからモスクワまでの夜汽車の中で坂田さんを口説きました。
「命とか絆とかいうタイトルでCDをつくらない?」と。
癒しの音楽なんて絶対にやらない、と坂田氏は強く拒否しましたが、病気の子どもたちに薬を送る活動の資金にする、と聞いて心が動きます。さいごには協力してくれることになり、鎌田實ファースト・プロデュースのCD「ひまわり」はジャズでは大ヒットの1万7000枚も売れました。


逆のケースは、「中学校の名誉教授になってほしい」とお願い事をされた話。
ある日かかってきた電話は、母校の杉並区立和田中学校の校長からでした。さだまさしの弟って言われてます、と自称する藤原和博という不思議な校長先生で、話をしているうちに、何でも応援させてくださいという気持ちになってくるのでした。


鎌田先生は歌手のさだまさしとも友人ですので、藤原和博を知っているか聞いてみました。なんと、藤原氏の結婚式でさだが歌ったことがあり、藤原氏に頼みごとをされるとなかなか断れない、とのことでした。


どちらのケースも、「子どものために応援してほしい」ということを語り続けたことで相手を口説くことができました。大切なのは、誰かのために行動を起こすこと、それをしつこく語り続けることのようです。


このほか、たった1年半のエッセイなのに、驚くほど多くの人との出会いと感動が紡がれていて、一つひとつのできごとから、幸せのヒントがこぼれています。
もちろん、全編を通じて「がんばらないけどあきらめない」という鎌田流の幸福術が貫かれていました。


きっと、あなたにとっての幸せも見えてくるに違いありません。