男はつらいらしい


著者:奥田 祥子  出版社:新潮新書  2007年8月刊  \714(税込)  205P


男はつらいらしい (新潮新書)    購入する際は、こちらから


帯に大ぎな文字で「あちこち男のグチだらけ」とあり、その横に酔った中年サラリーマンがベソをかいている山科けいすけのイラストが載っています。


ええ〜い、うっとうしいヤツだ。あっちへ行けーーっ。


同じ男として恥ずかしくなるような、こんなグチだらけの男の話に耳を傾けた週刊誌の女性記者がいました。悩める男性100人への、この奇特とも奇抜ともいえる取材を敢行したのが、『読売ウィークリー』編集部の奥田祥子さん。ことし41歳、独身です。
新聞記者として事件や災害を追ってきた奥田さんは、社内の異動で週刊誌の編集部に移ったことをきっかけに、日々の暮らしに密着して取材する機会が増えました。取材で「ふつう」の男性の話を聞くうちに、けっこう悩みをかかえている男が多いことに気づきます。


新聞の一面をかざる大事件を追うのもいいけれど、この男たちのありのままを描き出すことが私のやるべきことなのだ。


社会的な意義を見いだした記者は強い。
  「あのねー、あんた何が言いたいの?」
  「女のくせに、よくそんなこと……」
取材相手が怒りだしてもひるむことなく、奥田さんは悩める男のグチを聞き続けました。


本書は、その集大成――というより、中間報告です。
男たちの悩みを、「結婚できない男たち」「更年期の男たち」「相談する男たち」「父親に『なりたい』男たち」の4つの章に分け、それぞれ、男たちの深いふか〜い悩みをレポートしています。


僕は、もうすぐ50歳のレッキとした中年男性ですので、本書に登場する男たちの悩みは、よく理解できます。自分の悩みと共鳴する内容もありました。でも、第3章に登場する人と同じように僕も相談ベタだから(笑)、ここでは書きません。


通読して感じたことのひとつは、「やっぱり、男はつらいよ」ということです。
昔ながらの「男」の規範に合わせようとすればするほど、無理をしなければなりません。でも、「男」って瞬発力は強くても、忍耐力も持久力も弱い人が多いので、まわりが「いよっ、頑張ってるね!」と盛りたててくれないと続かないのですよ。


もう一つの僕の感想は、著者の取材態度への驚きです。
著者の奥田さんは「はじめに」に次のように書いています。

  「はぁー」「ふぅー」「うーん」――。
   正確に文字に表すのは難しい。言葉とも感嘆詞ともとれない、こんな
  男性たちの哀愁漂う深いため息を何百回、いや何千回、耳にしたことだ
  ろう。男というものが、これほどまでに沈黙を好み、また突如として饒
  舌に一変し、ネガティブな感情をむき出しにする生きものとは思いもよ
  らなかった。

よくもまあ、こんなグチっぽい男を100人も取材しましたねー。


本文の中にも、インタビュー中のハラハラする場面がたくさん登場します。
  「奥田さん、そこまでにした方がいいよ。もう一押し挑発すると、きっと
   キレて爆発するよ!」
それでも一歩つっこむのをやめない著者でした。


本書はあくまでレポートです。
解決策や処方箋は書いてありません。
でも、読んでいるうちに、「がんばらない」でも「あきらめない」という鎌田實先生のことばを思い出しました。


手にとりにくいかもしれませんが、やはり女性に読んでもらいたい本です。