著者:中村うさぎ 出版社:アスキー 2007年10月刊 \1,365(税込) 184P
中村うさぎの雑誌インタビュー連載をまとめた本である。
ただし、インタビューが基になっていても対談形式では書いておらず、対談で感じたことを書いたエッセイに仕上がっている。
雑誌の連載のはじまりは、「毎回、人殺しに会いにいく」というゲテモノ趣味の企画だった。しかし、インタビューに応じてくれる殺人事件の犯人がそんなに大勢いるはずもなく、パリ人肉事件の佐川一政、元連合赤軍の植垣康博が登場したあと、はやくも3人目で行きづまる。しかたなく登場してもらった三浦和義は無罪判決を受けている身で、著者の中村氏も「『人殺し』呼ばわりは不当だが」と弁解するしまつ。
しかし、編集者はめげない。鬼(異形、異才の人)に会いにいくことに路線変更し、『噂の真相』の元編集長、死体写真家、アダルトビデオ監督など、やはりゲテモノ趣味を続行した。
対談のあと、インタビュー相手への感想が記されているが、一方的に激しいことばで相手を裁断しているものが多い。佐川一政には「嘘つき」だと連呼し、連合赤軍は母性の敗北だったと断定し、三浦事件で我々は「他人を裁く」快感を味わったのだと分析する。
著者が相手を決めつければ決めつけるほど、中村うさぎの精神のありようこそが、異形のなかの異形であることが浮かび上がってくる。読者は、ものかげから、鬼と渡り合っている鬼うさぎの姿を怖いものみたさにのぞいているような気にさせられる。なんと薄気味の悪い構図だろうか。
10人の鬼との連続対談を果たした著者は、10人目の田島陽子氏の中に、意外にも菩薩の一面を見てしまう。菩薩に会ったのだからついでに神様にも会おう! と神様の近くにいるはずの牧師さんに最後に会いにいく。
もちろん、そんじょそこらの品行方正の牧師さんではない。その名を鈴木啓之氏といって、元関西の名うての博徒だ。イレズミ、3度の指詰め、2度の離婚という華々しい経歴をもち、ヤクザ仲間に命をねらわれたことから教会に逃げ込んだという堂々たる「鬼」である。
その鈴木氏との出会いに触発されたのか、うさぎはキリスト教系の女子校で中学・高校を過ごした日々を思い出し、神様にお願いごとを口ばしる。
曰く、
最後のお願いです。どうか、私を早くラクにしてください。
中村うさぎは、いつも自分に満足していない。自分の期待にこたえられない不甲斐ない自分を抱えてさまよい続けているのだ。
全編から著者のうめき声が聞こえてくる対談集だった。
感受性の強い人、女性の生きづらさに反応してしまう人は要注意だ。
僕も、学生時代に奥浩平の『青春の墓標』(学生運動と恋愛に悩んで自殺した学生の遺稿集)に共鳴してしまい、いっしょにうめき声をあげてのたうち回ったことがある。共感しすぎるのも考えものだ。
「ほんと、人生ってたいへんだよねー。さっ、あしたも忙しいから、早く寝よーっと!」と受け流せる人にお勧めかなあ。