副題:おもてなしのこころが、あなたの人生を変える
著者:鎌田 實 出版社:PHP研究所 2007年7月刊 \1,260(税込) 196P
先週の土曜日、接待ゴルフに行ってきました。
といっても、私はゴルフクラブを一度も握ったことはありません。会社の接待ゴルフの事務局員として、受付や点数集計を手伝いにいったのです。
お手伝いも5〜6回目になりました。「ゴルフなんて金持ちのスポーツ」と思っているので、最初のうちは、嫌で嫌でしかたありませんでした。何だか、召使いにでもなったような気がしたのです。
でも、だんだん接待先のお客さんの顔を覚え、雑談するようになってから、気持ちが変わってきました。接待ゴルフにくるようなエライさんは、地位や立場を鼻にかける人種ばかりかと思っていたら、そうでもありません。中には、「プレーもしないのに、たいへんだねー。ご苦労さま」とねぎらってくれる腰の低い人もいるのです。
すると、不思議なもので、「せっかく来ていただいたのだから、気持ちよくプレーして、楽しいひとときを過ごして帰っていただこう」という心構えになってきました。
おもてなしの心が芽ばえたのです。
私は技術者なので、ふだんはお客様にサービスをする現場から遠いところで仕事をしています。それなのに、いや、それだからこそ、リッツ・カールトンの感動的なサービスとか、ディズニーマジックについての本を読むようになりました。
今日の一冊も、おもてなしの心、ホスピタリティについて書かれたとても素晴らしい本です。
著者は『がんばらない』で有名な鎌田医師。
4月4日号で取り上げた『ちょい太でだいじょうぶ』も、やはり鎌田先生が書いたものです。
『ちょい太で――』は、1日くらいカロリーオーバーしても投げ出さないで、また明日から挑戦しよう、という「がんばらないダイエット」を勧めてくれる本でした。
今回も、鎌田流の「がんばり過ぎない」おもてなしの心を提案し、「超」ホステピタリティの素晴らしさを解説しています。
1回1000字弱の読み切りコラムを連ねたような構成をしています。ホスピタリティの真髄を身につけるため、いっぺんに読まずに、少しずつ、反芻しながら読むと良い本です。
書名に「超」をつけているのは、チョースゴイおもてなしだからです。
もう一つの「超」の理由は、おもてなしを超えるという意味です。おもてなしというテクニックも大切ですが、技術を超えて、こころがまえを重視したかったのです。
「がんばらない」超ホスピタリティには、名言がいっぱいです。
- もらう以上に与えてごらんなさい。
- 超ホスピタリティってアートなのです。技術と芸術の二面性を必要としているのです。
- サプライズが大事なのです。まさか病院でここまでしてもらえるのか。ホテルでここまでしてもらえるのか。驚きは感動となり、口コミで広がります。
- 仕事に成功し、人生の中で幸せを掴む。二つを得ることが大切なのです。それができるのが、この超ホスピタリティだと思います。
鎌田流ですので、うるうるする場面がいくつもありました。ひとつだけ、『がんばらない』にも書いている鎌田先生自身の逸話を紹介します。
(著者が)医者になって五年ほど経ったころ、母は脳卒中で倒れ、脳
死に似た状態にまで落ち込みました。(中略)そこで、父に息子として
医師として、「脳は元に戻らないから、人工呼吸器で延命を図ってまで、
母に苦しい思いをさせたくない。終わりにしよう」と自分の思いを伝え
たのです。
父は激怒しました。「お前の目の前にいる人は、お前の一番大事な人
じゃないか。少しでも長く生きててもらいたいじゃないか」と。母のた
めに私の何十倍も苦労をしてきた父の気持ちはよくわかります。母に人
工呼吸器をつめましたが、母は一週間後に亡くなりました。私は母の死
を通じて、支えるということは、その人の生きてきた歴史や家族の思い
などさまざまな要素で彩られていることを知りました。難しい仕事を選
んだのだと教えられました。人を支えるということも、ホスピタリティ
も正解は一つではないのですね。
ホスピタリティが必要となる職業(ホス業界)の人も、そうでない人もきっと真のホスピタリティが身につきます。