ミッキーのクリスマスキャロル


著者:矢部 美智代【文】,丸木 優子【画】   出版社:講談社  2001年9月刊  \1,050(税込)  32P


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昨年の12月はじめ、5歳の娘のために本書を買いました。
「ねえ、読んで読んで」というリクエストに応じ、さっそくその日の夜、寝る前に音読してあげました。
楽しい楽しいクリスマスのお話だと思っていた娘は、幽霊がたくさん出てくる物語の展開に、ちょっとだけ驚いています。最後はハッピーエンドに終わることをたしかめ、安心して眠りについた娘の寝息を聞きながら、私は懐かしい思いに浸ってしまいました。


ディケンズの代表作『オリバー・ツイスト』と『クリスマス・キャロル』を読んだのは小学校の高学年のころだったでしょうか。少年の日に読んだ子ども向け小説には、胸がキュンとなる懐かしさがあります。


実は、2年前に『オリバー・ツイスト』を再読しようとしたことがあります。
モリー・ムーンの世界でいちばん不思議な物語』(2005年3月24日のブログ参照)を読んだとき、主人公の貧しい境遇とドキドキする冒険のスピード感から、この本のことを思い出したのです。
でも、なぜか本の内容に入りこめず、途中で読むのをやめてしまいました。


オリバー・ツイスト』は、読めなかったなあ。
でも、もう一度読んでみようか。ディケンズを……。


ということで図書館で借りたのが、岩波少年文庫の『クリスマス・キャロル』です。
今度は読み通すことができました。


私のブックレビューでは、ストーリーの詳細を明かさないことにしているのですが、『クリスマス・キャロル』は、世界的に有名な古典作品で、内容をご存じの方も多いと思います。
それに、この本は、内容を知っていても読みたくなる種類の本なので、今回はあらすじを書かせていただきますね。


この物語の主人公は、金儲け一筋で一生を送ってきたスクルージという老人です。
クリスマス・イブに淋しい自宅に帰ってきたスクルージは、かつての共同経営者で、もう何年も前に亡くなったマーレイ老人の亡霊と出会いました。やはり金銭欲にまみれたまま死を迎えたマーレイ老人は、悲惨な死後の経験を明かして、生き方を変えるようスクルージを諭します。
マーレイ老人の幽霊が消えたあと、「過去のクリスマスの霊」、「現在のクリスマスの霊」、「未来のクリスマスの霊」の3人の幽霊が入れ代わり現われ、スクルージを連れ回します。


過去のクリスマスの幽霊に貧しくも楽しかった少年時代、婚約者と愛を交わした青年時代の自分の姿を見せられ、スクルージは悔恨の心を抱きました。
現在のクリスマスの幽霊に見せられたのは、自分の事務所に勤務している若者の明るい家庭です。しかし、スクルージの支払う給料は少なく、病気がちの末っ子の治療代も出せません。ささやかなクリスマスのお祝いは、末っ子の死を予感させるものでした。
未来のクリスマスの幽霊は、あの若者が妻といっしょに嘆いている様子――亡くなってしまった末っ子の埋葬をしている姿を見せます。そして、幽霊が指さした別の墓石に刻んであったのは、スクルージの名前でした。


愕然として目覚めたスクルージは、昨夜までとは全く違った人間に変身する決意を固めました。いままで寄付の依頼を断ってきたスクルージでしたが、喜んで慈善募金にお金を出します。悪態ばかりついていた甥の家を訪ね、いっしょにクリスマスを祝うことにしました。
また、事務所の暖房費をケチるのをやめ、あの若者に石炭を買いに行かせました。何より、若者の給料を上げることを宣言し、末っ子の治療費をまかなえるようにしてやります。


クリスマス・イブの一晩の出来事のおかげで、スクルージは金儲けのために忘れていた人間愛を、取り戻したのでした。(おわり)


話は変わりますが、このディズニーの『ミッキーのクリスマスキャロル』にちなんだお店があるのをご存じでしょうか。
東京ディズニーシーの入口を入って左斜めに(タワー・オブ・テラー方向に)進むとアメリカンウォーターフロントというテーマポートに突き当たります。このエリアの一番手前にあるショップの名前はマクダックス・デパートメントストアといいます。
ドナルド・ダックの叔父であり、世界一金持ちのアヒルであるスクルージ・マクダックが経営する百貨店、という設定です。
「ニューヨークの街の一区画」という場所の設定が微妙に違っていますが、何よりもお金を愛していることといい、苦虫をかみつぶしたようなしかめっ面といい、このドナルド・ダックの叔父さんは『クリスマス・キャロル』の主人公エベニーザ・スクルージがモデルになっていることは間違いありません。
そもそも、この絵本自体が、1983年に公開された同名映画を元にして作られているのです。


クリスマスが終わってしまい、ちょっと時期はずれの紹介になりました。
でも、貧しいなかから身を起こしたディケンズに世界的名声を与えた古典は一読の価値があります。


私の読んだ岩波少年文庫はちょっと訳が古いように感じましたが、さすがに絶版のようです。訳者を脇明子さんに変え、新しい岩波少年文庫版が2001年12月に出版されています。


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お試しあれ。