インタレスト early 2006 / latter 2006


著者:四国学院大学カルチュラル・マネジメント学科「インタレスト編集部」
出版社:四国学院大学  2006年4月/12月刊  \0(フリーペーパー)  各32P


本日取り上げるのは、書籍ではなく、A4版32ページの雑誌2冊です。奥書の発行所を見ると、「インタレストプロダクション(四国学院大学内)」と書いてあります。
実はこの雑誌、10月6日のメルマガで紹介した麺通団の田尾団長が、本業の四国学院大学の教授として学生達といっしょに作り上げたフリーペーパーなのです。


田尾氏が教授を勤めるのは、四国学院大学カルチュラル・マネジメント学科という、ちょっと長い名前の学科で、大学のホームページには、
  「観光、ツアー、スポーツ、イベント…4つの文化をマネジメントする」
とあります。
田尾氏は、タウン情報誌の編集長時代に讃岐うどんブームをしかけた人ですから、きっと「観光マネジメント」の腕を買われて教授就任したのでしょう。


私は、麺通団のファンなので、ここからは麺通団のみなさんにならって、田尾団長のことを「長」と呼び、ところどころ、アヤシイ讃岐弁を交えてこの本の紹介をさせていただきますね。


さて、「長」の専門は「情報加工学」。要するに雑誌編集のワザがものすごくプロフェッショナルっちゅうこっちゃ。
授業の一環でフリーペーパーを発行することに決めた「長」の元には、ものすごく意欲的な学生が集まるかと思えば、「ともかく単位いた」「単位つか」という消極的な学生も受講しています。(「いた」「つか」は、それぞれ「いただきたい」「つかあさい」のこと)


田尾教授が愛情を込めて「イナゴ軍団」と命名した、この大勢の学生達が人海戦術を駆使して取材に駆け回り、データを集計し、「長」のバカ話を挿入し、ちょこっとプロの手を加えてできた雑誌は、すこぶる斬新です。


まず、1冊目。
記念すべきインタレスト第1号である「early 2006」号の表紙には、メイン特集の「方言の乱」の文字がデカデカと載っています。
もう、タイトルからして「長」お得意のダジャレでスタートです。(このタイトルは「保元の乱」のパロディーです。本文に「ダジャレの説明はしない」とありましたが、日本史の不得意な方のために、念のため解説しときました)


内容は、代表的な方言をキーにして、同じ意味の方言が香川の西と東でどのように使い分けられているかを全県調査する、というものです。同じ意味なのに、香川県の東部と西部で違う方言を使うことがある、ということに編集部は目をつけます。
「つか」と「いた」、「きん」と「けん」、「なー」と「のー」という、代表的な3種類の方言を選び、使われ方と年代を「イナゴ軍団」が大調査し、分布図にしてみたところ、興味深いことが判明しました。
それは、いずれの言葉も60代以上では西と東でくっきりした境界が見られたものの、若い世代になるに従って、「つか」と「いた」は標準語に侵食されて使われなくなり、「きん」は東から攻めてきた「けん」に押され、逆に西の「なー」は東に拡大して「のー」を使う人が少なくなる、という変動があることです。


方言は、動いているのです!


なかなか面白い調査結果です。
やるじゃないですか「イナゴ軍団」。


ひとつ難を言えば、
  「いた」と「つか」の境界線は、坂出市丸亀市
  綾瀬町といった香川県の中央ライン
という文章が書いてあるのに、地図の上に、坂出市丸亀市がどこか、全く説明がないことです。
もちろん、この雑誌は香川県内に配布する前提で作ったものですから、私のような他県人が分かるように作っていないのは仕方ありませんけど……。
ひょっとすると、田尾教授が、
  「市町村名の説明なんか、いらんいらん。そんなもん、常識やろ」
と削除してしまったのかもしれませんね。
「長」が決めたことに文句を言うのは筋違いですが、全国的に通用する内容なのに、配慮不足がちょっと残念でしたよ。


第1号は、この他「香川県の名字勢力図」などの記事が載ってます。さすが「香川県」の雑誌です。


第2号のインタレスト「latter 2006」号は、次のような内容です。
  メイン特集「修学旅行の行き先の変遷大調査」
  サブ特集1「申請書類の記入例大検証」
  サブ特集2「お札にしたい香川県人・香川の風景」
  サブ特集3「タイの若者雑誌を集めてきました」
  サブ特集4「2006年『私の好きなうどん店』ランキング」


タイトルを見ただけで、面白そうでしょ。
「お札にしたい香川県人・香川の風景」なんて大笑いしてしまいましたし、「2006年『私の好きなうどん店』ランキング」は、「教授」というより「団長」が喜びそうな特集でした。


今日も本文が長くなってきたので、私の内容説明はここまでにします。
もっと詳く知りたい方は、麺通団公式サイトの2006年12月20日の日記をご覧ください。
       ↓
  http://www.mentsu-dan.com/diary/bn2006_12.html


この雑誌は書店には売っていませんので、読んでみたくなった方は、大学にハガキで「インタレストが欲しい!」と送ると、郵送料あと払いで送ってくれます。(第1号は、もう品切れかもしれません)
大学の住所、ハガキの記載内容等も麺通団公式サイトの2006年12月の日記に載っていまーす。上記を参照くださーい。


香川県の中でも一部の人しか知らないこの雑誌を読んで、あなたも麺通団の田尾団長のアヤシイ世界にお越しください。


一足先に行ってるからのー。


それにしても、この雑誌のように、「○○県」を徹底的に楽しむ内容は面白いですね。
そういえば、仕事で訪問した富山県でも、「県の西と東で文化の違いがある」と聞いたことがあります。


富山平野の中央部に呉羽山(くれはやま)という低い山があり、ここいらが文化の境目なので、この山より西のことを「呉西(ごせい)」、この山より東のことを「呉東」と呼びます。
そばやうどんのツユひとつとっても、呉西は関西風、呉東は関東風という違いがあり、呉西の住民と呉東の住民は何かと張り合ってしまうそうです。


私の出身地、北海道は、明治以降に移民で入ってきた人が多いので、出身地に影響を受けた文化がつくられます。
たとえば、札幌のとなりに北広島市という市があります。明治17年広島県人が集団移住したのが地名の起源、とのことですので、広島県の文化が引き継がれているのかもしれません。
でも、「集団」とはいってもたった25戸ですから、今も「じゃけぇ」とか「じゃけん」と言っている市民が多いかどうかは分かりません。ここは、北広島市にある道都大学の学生の皆さんに調査してもらうしかありませんね。


ちなみに、私の故郷は、どこかの県の集団入植地ではありませんでした。ただ、となりに住んでいた方が岡山県の出身で、岡山弁や讃岐弁に共通の「わや」(無茶苦茶なこと)なんていう言葉を私自身が普通に使っていました。
麺通団の田尾団長のポッドキャスティングを「面白い」と感じるのも、ひょっとすると、岡山弁と讃岐弁が近しい方言だからかもしれませんね。