武田家滅亡に学ぶ事業承継


著者:北見昌朗  出版社:幻冬舎  2006年6月刊  \1,575(税込)  270P


武田家滅亡に学ぶ事業承継


著者は、「戦国に学ぶ中小企業経営」という視点で経営者へのアドバイスを行っている経営コンサルタントです。
一国一城の主が下克上という競争社会で生き残っていく工夫、というのは、中小企業の経営者が心すべき教訓にあふれている、というのが著者の視点のユニークなところ。
織田信長の経営塾」、「豊臣秀吉の経営塾」に続く本書は、武田信玄を反面教師として事業継承のポイントを解説しています。


武田信玄戦国大名として強大な勢力を誇りましたが、後継者の武田勝頼の時代に武田氏は滅亡してしまいました。
従来は、偉大な先代の教えを守らなかった武田勝頼に責任がある、という評価が一般的でしたが、本書では、「信玄に7割、勝頼に3割の非」と、後継者対策をおろそかにした信玄の責任を追求しています。


戦国大名の跡継ぎ問題というのは、骨肉の争いに発展します。
信玄自身が父の信虎と対立し、クーデターを起こして当主となった過去を持っています。信玄は、当初、正室の子である武田義信を後継者として育成していましたが、今川氏との同盟解除問題で意見が対立し、義信を幽閉してしまいました。
最後まで自分の意志をつらぬいた義信は自害。しかたなく、母方の姓を名乗っていた側室の子、諏訪勝頼を武田勝頼と改名させましたが、権限委譲が不完全だったため、勝頼は古参幹部に囲まれてつらい立場にたたされました。


自分の存在感を増そうとして、勝頼は信玄の遺言に背いて外征に打って出るようになり、長篠の合戦で大敗を喫してしまいます。その後、一度は勢力を盛り返しますが、長篠の合戦の7年後、家臣の裏切り、逃亡の末、とうとう勝頼、長男信勝が自刃し、武田家は滅亡しました。


著者は信玄の犯した失敗を次のように箇条書きにして指摘します。
 ・真剣に天下を狙うのなら、川中島で時間をかけ過ぎた
 ・自分の寿命を考えずにいつまでも家督相続を行わなかった
 ・自分に対する過信から後継者育成に真剣に取り組まなかった
 ・勝頼を“代理の当主”にするという中途半端な禅譲を行った
 ・勝頼を軽んじる古参幹部を残し、後継者がやりにくい体制にした


他にも、「継がせる側のための十の教訓」、「継ぐ側のための十の教訓」など、武田家の悲劇から数々の教訓をすくいあげ、中小企業経営者が心すべき戒めとして提示しています。


内容もさることながら、私が感心したのは、本書が「事業承継塾」講座の実況中継として書かれていることです。
長篠の古戦場跡地で開講したこの講座は、なんと、講師に武田家の筆頭家臣だった山県昌景《やまがたまさかげ》を招きました。
「拙者が山県昌景だ」と講師が登場したときには、つい笑っちゃいましたが、武田信玄、勝頼の相克を証言するには、これほどの適任者はいません。


読み物として工夫してあり、最後まで興味深く読むことができました。
歴史好きの方にもお薦めです。


私が本書を知ったのは、藤井孝一さんの「ビジネス選書&サマリー」というメルマガです。このメルマガには、「昨日、読んだ本」というコーナーがあり、前日読んだ本の内容を3〜4行で簡単に紹介しておられます。
本書は、「ビジネス選書&サマリー」8月17日号の「昨日、読んだ本」に取りあげられていました。
なんでも、アマゾンに書評を載せるという条件で先着10名にプレゼント中、とのこと。


アマゾン書評はお手のものですので、さっそく応募メールを発信。
アマゾンのレビュー順位163位(当時)というアピールが効いたのか、すぐに返信をいただきました。


ありがたいことに、「以下の中から何冊でも著書を差し上げます」とのご回答。
 「織田信長の経営塾」 
 「豊臣秀吉の経営塾」
 「武田家滅亡に学ぶ事業承継」
 「サービス残業・労使トラブルを解消する就業規則の見直し方」
 「小さな会社が中途採用を行う前に読む本」 


ただし「2週間以内にアマゾンに書評を載せる」という条件つきでした。


いったんは喜んだものの、ちょっと考え込んでしまいました。
私は、同じ傾向の本を続けて読むと、飽きてしまうのです。ですから、いつも3種類〜5種類くらいの本、もちろん違う著者の本を同時並行して読んでいます。
同じ著者の本を2週間で5冊読むというのは、私の読書ペースに合いません。


「ありがたいご提案ですが、当初お願いした一冊だけお送りください」とご返事しました。


ていねいに返信したつもりだったのですが、著作は送られてきませんでした。それきり何の連絡もありません。
「あなたの本を5冊も読みたくありません」というメッセージに受け止められたのでしょうか。
残念です。


しかたなく、自分で購入……するのももったいないので(笑)、図書館に予約。


先週、やっと手に取ることができましたよ。


「歴史に学ぶ経営」という視点が斬新でした。
他の著書も、おいおい読んでみようかな、と思っています。(ただし、図書館で)