林文子さんの講演会に参加してきました


3月16日のメルマガで紹介した、『一生懸命って素敵なこと』の著者、林文子さんの講演会に参加してきました。


林さんは、車の販売店、社長を経て、昨年4月からダイエーの会長に就任。産業再生機構の推進する企業再生の請負人としてダイエー再建・再生に情熱を燃やしておられる方です。


「新しい流通業を目指して ― 新生ダイエーの挑戦―」と題した講演では、ダイエーを再建させるための方策を中心に、スーパーマーケットの現場を回って感じること、感動したことを語っていただきました。


冒頭、再生の第1クォーターで早くも黒字を出すことができたことを述べたあと、
  「期待してきた皆さんには申しわけありませんが、
   流通業には、目の覚めるような事業改善方策はありません」
と断言されました。
むしろ、立案した事業改善計画を倦まずたゆまず実行できるか、実践しぬくことができるかが勝負、とのこと。


とはいえ、続けて紹介いただいたダイエーの再生計画の内容は興味深いものでした。
詳細は省きますが、5つの意識改革と5つの営業改革が柱になっています。
このうち5つの営業改革は樋口社長(林さんとダイエー再生のコンビを組んでいる人。元日本HP社長)が主に担当。林さんが情熱を傾けているのは「5つの意識改革」です。


ダイエーの8割はパート社員です。そのパート社員がダイエーで働くことに満足してくれること、誇りに思ってくれること(ES=従業員満足)が第一で、そこからお客様を大切にする気持ち(CS=顧客満足)が生まれてくる、という考え方は感動的でした。
この考え方から、職場環境の改善(従業員用の汚いトイレを清潔な気持ちのよいトイレにリニューアルすること等)や会長賞・社長賞の授与式を実施するようにした、とのこと。

再生計画を立案する第一歩として5万人の社員・パートさんにアンケートを配布したところ、4万8千人から回答が寄せられました。
この高い回収率も驚きですが、そのアンケートの活用の仕方にも驚きました。
スタッフ部門で集計して抜粋を経営幹部に報告したのかな、と思いきや、会長・社長・取締役が分担して、ひとり約4千枚の分量に全部目を通したそうです。


百人検討会という会議で再建策を検討している様子も写真で紹介されました。
一見、なんの変哲もないブレインストーミングですが、長いことカリスマ経営者の下で働いていたダイエー社員にとっては、それ自体が革新的だったとのこと。
なんだか、プロジェクトXの世界ですね。


最後に5分ほど質問コーナーがありました。
「仕事と家庭の両立方法は?」と尋ねられると、「男性からそういう質問をされたのは初めてです」と、まず質問者をほめるあたり、さすが元トップセールスです。
また、「本を何冊も出したり、講演会にたくさん出たり、露出が多いのでは」という意見には、「本は何冊も出していません。2冊だけ」とピシャリ。その2冊も、どうしても断りきれなくなった結果であること、講演会も女性フォーラム以外は原則的にお断りしていること、テレビも同様であることを簡潔に回答されていました。


全国のダイエー店舗を回って、パートタイマーとの会話から感銘を受けた逸話も披露していただきました。
  「15万人全員とお会いすることはできませんが、
   15万分の1の人と真剣に向かい合えば、必ず他の人にも伝播していく。
   心で伝えることが大切」
この方は、やはり人が大好きなんですね。