副題:「人とお金」が集まる仕事術
著者:中村 伸一 出版社:ナツメ社 2006年5月刊 \1,575(税込) 199P
本書は、冒険専門の旅行会社「エクスプローラ」の社長が書いた「感動する会社案内」「感動する私の履歴書」です。
このちょっと変わった旅行会社は、別名「地球探検隊」ともいい、主に、海外の旅行会社が主催する現地集合・現地解散型のツアーを扱っています。
「地球探検隊」なので、旅行に参加した人を「お客様」ではなく「隊員」と呼び、著者も「社長」ではなく「隊長」と呼ばれているとのこと。
こんな呼びかたができるのも、この会社のツアーが単なる観光ではなく、精神的なタフさを身につけさせてくれるアドベンチャーツアーだからです。
何よりも「感動」を大切にする隊長が、この特殊な会社をどのように誕生させ、隊員との交流を通じてどのように成長していったか。
本書に、その過程が綴られています。
小さな旅行会社で、仕事をまかされるようになった著者は、自分自身が広い世界を見てみたいという希望を持っていました。国際的に「大人料金」が適用される26歳を前にして、とうとう衝動をおさえられなくなり、会社を辞めた著者は国際放浪の旅に出ました。旅先で、かつて海外旅行のお世話をしたお客様に再会したことが、著者の人生を決めます。
「ホントにいい旅でした。ありがとうございました」と言われたことが生きる力を与えてくれ、著者が旅行業を人生の目的とする原点になったのです。
偶然立ち寄ったロンドンの中央郵便局に、辞めた会社の社長からのバースデーカードが届いていました。「戻ってきなさい。一緒に頑張りましょう」という言葉に著者は泣きました。
独立してからの道のりは、決して平坦ではありませんでしたが、「感動」を売り物にする著者の姿勢は一貫していて、決してブレませんでした。
中でも、絶好調だった会社が直面した米国同時多発テロでの対応は見事です。「弱くて逃げ出したくなる自分といつも戦っている」という著者の、毅然とした対応には拍手を送りたくなりました。
私自身のことを振り返ると、何かと忙しくしているうちに学生時代を終えてしまい、リュックひとつで放浪するような旅は、ついぞ経験することがありませんでした。
身一つで海外に飛び出した著者の勇気には、感嘆するしかありません。
若き日に実現できなかったアドベンチャーに思いをはせながら、「隊長」の「感動する私の履歴書」を読ませてもらいました。
「感動」って伝染しますよ。