副題:本当の大変化はこれから始まる
著者:梅田 望夫 出版社:筑摩書房 2006年2月刊 \777(税込) 249P
情報化社会の「暗」を描いた『インターネットは「僕ら」を幸せにしたか?』を昨日紹介しました。かたや、今日の『ウェブ進化論』の著者は、楽観的です。インターネットの最先端を走る若者たちから受けるワクワクする刺激が、こちらにも伝わってきそうな本です。
著者はシリコンバレー在住で、経営コンサルタントとして日本の顧客に新しいIT技術動向をアドバイスするため、日本と米国を往復しています。
著者が楽観的なのは、仕事としてインターネットに関わっているからではなく、何が起こるかわからないネットの将来に限りない未来を感じているからです。
過去10年にネットが成し遂げたことの一つは、コミュニケーション費用の低減でした。リアル世界で店舗を持てば、売れ筋の商品をたくさんさばかなければなりませんが、ネットの世界では、あまり人気のない商品でも、本当に欲しがっている誰かが探して注文してくれます。
恐竜のしっぽが延々と続く図に見立てて、人気のない商品でもコツコツ積み上げれば大きな売り上げになることを「ロングテール」現象と呼ぶようになりました。
また、オープンソースに代表される「不特定多数無限大」の人々が繰り広げる活動が、ネットの「あちら側」に想像もできない世界を築いています。
ウェブの世界にグーグルという全く新しいタイプの企業が登場し、著者はますますワクワクしています。「確実でも想像できそうなもの」には面白みを感じなくなり、個性的な「想像できなさ加減」に興奮している様子が読者にも伝わってくる一書でした。
技術系の新書なのに、よく売れているようです。
話題が話題だけに、ウェブ上でもこの本の話題が駆けめぐっていて、グーグルで検索すると270万件もヒットします。私がよく読んでいるブログやメルマガでも既に取り上げられているところがほとんどで、こうしてブックレビューを書いていても、他の誰かと同じような内容になりそうな気がします。
いっそ、本書の内容紹介をやめて、ウェブ上で見つけた本書の実例のことを書いてみようと思います。
著者の大きなテーマの一つは、“Web 2.0”です。
インターネットのおかげで提供できるようになった便利なサービスが“Web 1.0”で、“Web 1.0”の成果を他の開発者にも公開することによって、更に便利な活用方法があちこちで生まれることが“Web 2.0”、と著者は定義します。
実際の会社で言うと、グーグルやアマゾンが Web 2.0 会社で、ヤフー・ジャパンや楽天は、いったん成功を収めたあとネット事業を Web 1.0 のままにしている会社、とのこと。
著者が「ルール破壊者」と賞賛しているアマゾンは、自社が築き上げた本のデータベースを誰でも利用できるようにし、アプリケーションインタフェースというものを公開しています。プログラム知識のある人がこのアプリケーションインタフェースを使うと、アマゾンのようなサービスをするサイトやプログラムを作成することができます。
このインタフェースを使った実例――アマゾン以外の会社がアマゾンのデータベースを利用するプログラム――を先日見つけました。
その名もズバリ、「Amazon Application」!
自分のパソコンにインストールすると、アマゾンのサイトと同じように本の検索ができ、検索結果を分類フォルダにマウスでドラッグするだけで蔵書リストや欲しい本のリストが作成が可能。リストをExcel用ファイル(csv形式)で出力することもできますよ。
このソフトを使って本の注文をすると、このソフト開発会社にアマゾンから紹介料が払われる、というのが“Web 2.0”的ですね。
本を探すための専用ブラウザとして使うことができそうですよ。
http://www.woodensoldier.info/soft/AmazonApplication.htm で無料ダウンロードできますので、お試しください。