プロの論理力!


副題:トップ弁護士に学ぶ、相手を納得させる技術
著者:荒井 裕樹  出版社:祥伝社  2005年9月刊  \1,365(税込)  204P


プロの論理力!―トップ弁護士に学ぶ、相手を納得させる技術


著者は、青色発光ダイオード中村裁判などにたずさわり、28歳で年収1億を達成した敏腕弁護士です。実績をあげるのに大きな力を発揮した「論理力」についてノウハウを明かしてくれる、というので手にとりました。


本のタイトルは出版社が決めるそうですが、本書はその典型例ですね。
著者自身が「決して理屈で物事すべてを解決しようとしているわけではない」と書いている通り、
  「論理力でコントロールできること」

  「論理力でコントロールできないこと」
をきちんと峻別することが大切であることを前提にしています。
「論理力」というよりは「交渉力」について書かれた本でした。


著者がこんなに「論理、論理」と言うようになった原因の一つは、家庭環境です。著者の父親も弁護士で、著者が何かを買ってもらおうとすると、必ず理由を明らかにしなければ応じてくれませんでした。
遊びのために使うお金を渋るのは分からないでもありませんが、父親は徹底しています。息子が大学受験のために通信教育を始めたいと言い出しても、なぜ大学合格のためにその通信講座を受けなければないのか、どのような効果が期待されるのか、合理的に説明せよ、というのです。
気の弱い息子でしたら諦めそうなものですが、著者は違います。意志の強そうな表紙の写真でも分かる通り、親を納得させるまで理屈をひねり出して粘るのです。


今でも、常に論理的に物を考えるように努めています。エレベータに乗るときは、少しでも時間を節約するために、行き先ボタンを押す前に「閉」ボタンを押す、というノウハウも惜しげなく披露していますよ。
そこまでしなくてもねぇ、と思ったあなた!
そんなことでは、「プロの論理力!」を身につけることはできませんよ。


本書で論理力のノウハウを明かしてもビジネス上のメリットはほとんどありませんから、著者が本書を執筆した動機は、印税を期待したからではありません。
著者の言葉によれば、
  「『個人の力』で勝負する『個人の時代』の到来を、
   より近くに引き込みたいから」
とのこと。


いやはや。疲れを知らない著者でした。
やはり、私は付いていけそうもありません。
「プロの論理力!」の道は険しいなぁ。