イマイと申します。


副題:架空請求に挑む、執念の報道記録
著者:日本テレビ報道特捜プロジェクト
出版社:ダイヤモンド社  2005年8月刊  \1,500(税込)  252P


イマイと申します。―架空請求に挑む、執念の報道記録


日本テレビのニュース番組で何度か架空請求業者追求の特集を組んで放送したことがあり、私も一度見ました。
業者との電話でのやりとりを中心とするもので、番組の性質上、相手の顔の映像はありません。取材者側のイマイという記者も後姿しか映されず、彼が日本テレビと思われるビルの高層階の窓際に置かれた電話でトツトツとやりとりする様子が、延々と映し出されていました。


本書は、4回分のこの特集番組の内容をまとめたもので、相手が根負けするまでイマイ記者が電話を続ける様子を再現しています。
各章は、架空請求業者にイマイ記者が電話をかけるところから始まります。待ってましたとばかり、業者は使ってもいないサービス料金を振り込ませようとします。イマイ記者は相手の言うがままに振り込みそうな期待を持たせますが、もちろん振り込んだりしません。指定された期日が来ても振り込まれていないことが分ると、業者は威嚇の電話をかけてきます。
相手は、あの手この手で脅しますが、何回かすっぽかされて、とうとう捨てゼリフを吐いて電話を切ります。イマイ記者の本領発揮はここからで、何回電話を切られても電話をかけ続けます。相手が怒っても、呆れても、「お願いだから、もう電話しないでくれ」と懇願されても、業者が架空請求であることを認めるまで、リダイヤルをやめません。
最初はおとなしそうな性格に思えたイマイ記者の言い回しが、最後は執念の追及者の口ぶりに聞こえてきましたよ。


イマイ記者と業者のやりとりは、ブラウン管のこちら側の安全地帯から見ていると、思わず笑ってしまうような箇所もありました。
たとえば、業者に“ロリッコくらぶ”というサイトのアクセス料金を請求された電話での会話。
  イマイ:僕、そういう幼い少女とかって、あんまり興味ないんですよね。
  業者 :ああ、幼い少女は興味ないんですか?
  イマイ:僕はでも、あの、もうちょっと上の人のほうがいいんで。
  業者 :それは私もわかりませんけども。
      とりあえず入金のほうは時間が、迫っていますので。


まるで、業者がイライラするのを楽しんでいるようにも聞こえます。
でも、これはイマイ記者だからできること。相手は脅しにかけてはプロですから、この本のマネをして一般人が業者に電話してはいけません。
業者の脅しは強烈ですよ。
   もし入金がなければ指の一本や二本はぶっ飛びますから
   自宅のほうに若い衆回しましょうか、何人か?
   靴はいたまんまでね、ガラス叩き割って。
   そのくらいのことはやりますよ、これは脅しでもなんでもないです。
多くの業者は口先だけの脅しのようですが、これだけ言われたら、たとえ数10万円の金額でも、面倒なことになる前に振り込んで許してもらいたくなってしまいます。


イマイ記者のリダイヤル攻撃に、ある業者は架空請求であることを認め、別の業者は「やめられたほうがいいと思うんですよ」という忠告に、「イマイさん、ありがとな」と電話を切ったあと、翌日から電話がつながらなくなりました。


架空請求業者の恐怖の実態を垣間見させてくれ、業者を追い詰めるイマイ記者の姿に胸がスッとする一書です。