胡錦涛―21世紀中国の支配者


2003年3月刊  著者:楊 中美(著), 趙 宏偉(監修), 青木 まさこ(翻訳)
出版社:日本放送出版協会  \1,680(税込)  283P


胡錦涛―21世紀中国の支配者


テレビ東京で以前やっていた「クイズ赤恥青恥」という番組の中に、政治家にクイズを出して正解するかどうかを当てる、というコーナーがありました。ある回に「この人の名前は?」と私の知らない中年男性の写真が示された時、「コキントウ!」と正解されて少し悔しかった。それが私の胡錦涛との出会いでした。さすがに最近はニュースで見かけることも多くなりましたが、ず〜っと気になる人でした。
隣国のトップについて少しは知っておかなければ、とやっと手にしたのが本書です。


本書では、胡錦涛が1942年に誕生してから2003年に中国共産党のトップに上り詰めるまでの生い立ち、政治経歴を好意的に紹介しています。資本家に近い階級としてハンディのある「小業主」出身の胡青年は、努力してエリートの仲間入りをしました。文化大革命や政治的苦難を乗り越えて国家指導者になるまでの道のりは、結果の分かっているサクセスストーリーとして安心して読めます。決して平坦ではなかった道を歩んできた主人公を応援したくなったりもします。


一方で、彼は「中華の本流としての自負をもち、中華振興を自らの使命として」おり、「冷徹な対応をする」人物でもあります。1989年3月にチベット独立運動が盛り上がった時、チベット自治区のトップだった胡錦涛は武力鎮圧を発動し、500人〜800人と推定される(中国政府発表は12人)死者を出しました。
ブラッド・ピット主演の映画「セブンイヤーズインチベット」で描かれた中国軍のチベット侵攻(1950年)が二重写しになり、悪玉の頭領のようにも思えてきます。


日本と中国の関係を考えると、今後は冷徹な胡錦涛を見ることが多くなるかもしれません。中国から見れば日本はアメリカの同盟国であり、本書でも「日本と中国の関係は今後も長期間、停滞局面にあるだろう」という彼の見解を紹介しています。


ちょっと中国通になった気になれるオススメ本です。