世間のウソ


2005年1月刊  著者:日垣 隆  出版社:新潮新書  \714(税込)  206P


世間のウソ (新潮新書)


世の中で常識化していることがらが実は間違っている、という15の話題を取りあげ、著者らしいシニカルな口調でその理由を明らかにする一種の告発本です。


人はウソをつき生き物ですから、恋人の追及を逃れるためについウソを言ってしまう、なんていうこともあります。こんなウソは後でバレた時に修羅場を招くかもしれない、という危険はありますが、他の人に迷惑をかけるウソではありません。
本書では、そういう他愛のないウソではなく、もっぱら「世論を誤らせる構造的なウソ」を取りあげました。


最初の「宝くじのウソ」では、当選確率が信じられないくらい低い、とか、日本の公営ギャンブルは配当率が世界一低い“搾取”だ! などが明かされました。が、私は「ふーん」と思ったものの、著者ほど義憤に燃えませんでした。だって、宝くじって、当選を目指すというよりは、ひとときの夢を楽しむものでしょう? 第一、私は宝くじのコマーシャルに登場する所ジョージのファンだし……。


他の話題もだいたいこんな調子で、「日垣さん、そんなに熱くならなくてもいいんじゃない」と、ちょっと引き気味で読み進みましたが、中には、「えっ、そうだったの?」とびっくりする話もありました。
例えば、ストーカー事件や虐待のニュースの中で、警察が「民事不介入の原則があるために、対応が遅くなってしまった」と言い訳しているのを耳にしますが、著者は「そんな原則は存在しない。完全な幻だ」ということを教えてくれます。(第八話 児童虐待のウソ)
戦前の絶対家父長制のもとで存在した「民事不介入の原則」も、戦後は憲法民法(一部)が生まれ変わって家父長制がなくなり、消滅してしまった、というのです。しかも、この事実を四年前に法務大臣に直接確認し、その後、法務省警察庁、警視庁は公式に一度も、この原則の存在について触れていないそうです。
著者は、単に理屈っぽいヘンクツなおじさんなのではなく、義憤に燃えた行動者、という顔を持っているのです。
NTTが電話加入権を廃止し返金しない方針を固めたことに対しても、「詐欺である」とバッサリ。いやぁ、気持ちいいでーす。


また、「料金設定のウソ」では、郵便局の冊子小包クロネコメール便を比較し、「1キロ以内なら、圧倒的にクロネコメール便が安いことがわかります」と結論していました。最近、いろんなカタログがクロネコメール便で届くようになりました。何百部も同じ冊子を送るときしか受け付けてもらえない、と勝手に思っていましたが、どうやら一般人も送っていいようです。勉強になるなぁ。


きっと何か発見があります。ご一読あれ。
ただし、著者も「まえがき」に書いているように、後遺症として多少皮肉っぽくなるかもしれませんのでご注意ください。