あなたの仕事が劇的に変わるメール術


副題:達人が教える45のヒント
2005年6月刊  著者:平野 友朗  出版社:ビジネス社  \1,470(税込)  229P


あなたの仕事が劇的に変わるメール術


仕事やプライベートでメールを使う機会は多いですから、メール作法についての本にはついつい手が伸びてしまいます。
本書の著者はメルマガ専門コンサルタントです。ふだんコンサル相手に指導しているノウハウを明かしてくれたのですから、参考になることがたくさん書かれています。ふだんからメールマナーに気をつけている人にも、きっと参考になることが多いでしょう。
「基本的な文章構成をマスターする」「気遣いと返信期限の関係」「テンプレートでさらにスピードアップ」などのノウハウの他、「メールが仕事を連れてくる」「メールが人脈を作り出す」などメールの効用についてもあらためて考える機会を与えてくれます。


私自身が参考になったのは、メールを返信する順番についての考え方です。
外出先から職場に帰ってきたら10通くらいメールが届いていた、というのは、よくある場面だと思います。ともかく急ぎの内容に返信したあと、普通の人は古い順から(先着順に)片づけます。届いたメールのタイトルや内容で緊急度を判断するのは当然として、著者の意表を突く提案は、なんと「一番新しいメールから順に返信していく」ということです。
例えば、一番最後に届いた(一番新しい)メールが5分前に届いたとして、その場で返信すれば、相手は「5分後に返事が返ってきた!」と驚いてくれます。場合によっては、驚きが感動になるかもしれません。反対に最初に届いたメールが5時間前に届いたものならば、その返信が5時間5分後だろうが、6時間後だろうが、相手に与える印象は大した違いはありません。
普通に古い順に全部を1時間で処理したとすると、一番最後に届いたメールへの返信はは届いてから約1時間後ということになります。これでは相手にも普通の印象しか残りません。
相手の反応を想像しながら返信のタイミングを考えることが重要、と著者は言っているのです。


本書の全編を貫いているのは、やはり「相手に不快感を与えない」「相手に喜んでもらえる」という姿勢、「こころ」をこめたメールの大切さです。
ただ、著者はあくまでビジネスのためのメールを主眼にしていますから、『メール道』の久米信行さんの「Give & Give & Given」のような、一種の哲学には至っていません。座右の銘にするなら、やはり心の底から納得する『メール道』(昨年9月16日のブログ参照)をお薦めします。
なんだか、標題の本ではなく『メール道』をお薦めしてしまいましたが、この本も役に立つノウハウがたくさん書かれています。決してオススメしていないわけではありませんので、そこんとこ誤解のないようによろしくお願いします(汗)。


最後に、私の提案するノウハウを一つ。
それは、単語登録のしかたです。


平野氏はヒント31に「単語を登録してスピードアップ」と書いています。よく使う単語や文章を日本語入力ソフトに登録して、頭の何文字かを入力すれば残りの文章が表示されるようにする、という方法です。「今後ともよろしくお願い致します」の読みを「こんご」と登録するのです。
しかし、著者のように単に「頭の何文字かを入力すれば」というだけでは、文章入力の効率を上げるためには充分なノウハウではありません。この方法では、ふつうに「今後」と書きたい時にも「今後ともよろしくお願い致します」という変換になってしまいますから、もう一度「変換」ボタンを押して自分の意図する文字を選択しなければなりません。
効率よく文章を入力するには、同音異議語をゼロにすべきです。「こんご」と入力して複数の候補から選ぶというアクションは、ほんの少しですが余分な時間がかかります。画面から目を離した隙に違う文字を確定してしまうミスにつながりかねません。


そこで、私の提案。
「頭の何文字か」ではなく「普通の日本語には出てこない読み」で登録してはどうでしょうか。たとえば「こんご」と登録する代わりに「こんごす」と登録するのです。こうすれば、キー入力時間の短縮と変換ミスの撲滅の一石二鳥が可能になります。
私は、他にも、
  「ありがとうございます。」………「ありがす」
  「ありがとうございました。」……「ありがた」
のように登録しています。皆さんも参考にしてはいかがでしょうか。


……なんてエラソウに書きましたが、実は、このノウハウは、カミさんから教えてもらったノウハウなんです。
カミさんは元速記者で、地方議会の議事録作成や、インタビュー原稿の素起しをやっていました。速記文字という、一般人には解読不能な、あのミミズ文字で速記を取っていましたが、「あ」「い」「う」「え」「お」の50音それぞれの速記文字とは別に「でございます」などのよく使う言いまわしを一文字で表して記録していたそうです。
最終的にはワープロで清書するのですが、速記文字や録音テープを元に打ち込む時にも同じ方法で時間短縮をしていました。「でございます」は「でごす」と単語登録しておくのです。


更に余談になりますが、カミさんがワープロをマシンガンのように打っているのに驚いて、どうしてそんなに速いのか訊いたことがあります。ワープロ検定2級保持者が速いのは当たり前なのですが、カミさんは「親指シフトキーボードは打鍵数が少なくて早く打てるんだよー」と教えてくれました。
仕事でもプライベートでも文章を書くのですから、これから何十年もキーボードのお世話になります。入力効率が良いに越したことはありません。ローマ字入力・JISカナ入力の両方を試していた私ですが、いいことを教えてもらったと、私もさっそく親指シフトキーボード(NICOLAキーボードとも言います)に乗り換えることにしました。
その後、もう10年近く親指シフトキーボードを愛用しています。乗り換えるのは大変ですが、使いやすいし、速いですよー。
皆さんもお試しあれ。
興味を持った方は、日本語入力コンソーシアムのホームページを参照下さい。