ドラゴン桜 (7)


2005年4月刊  著者:三田 紀房  出版社:講談社(モ−ニングKC)   \540(税込)


ドラゴン桜(7) (モーニング KC)


経営破綻した高校に乗り込んできた債権整理人の桜木が、建て直しのために「東大合格者を出そう!」と奮闘する物語です。私の尊敬する読書人から、なぜかこのマンガの第7巻をプレゼントされ、読んでみました。


第6巻までに数学、英語、国語、社会を短時間で制覇したようで、第7巻では理科の攻略法をテーマにしています。教えてくれるのは、いかにもアインシュタインをモデルにした「阿院修太郎」という教師。他にも国語の先生が「芥川龍三郎」だったりして、教師の名前はコテコテです。
阿院先生は、マップツリーという図で印象的に覚えるのが効果的、と秘蔵のノウハウを披露してくれました。


印象的だったのは職員会議の議論です。今回のテーマは生徒の進路指導。
キメ細かく生徒たちの相談に乗る体制を作り“夢プロジェクト”を立ち上げたらどうか、という若い教師の提案を、「めんどくせえんだよ」と一蹴する桜木。真剣な提案を受け入れない理由は何か、と若い教師は迫ります。(マンガなので「議論」がすぐに「激論」に発展します)


桜木は一つの例をあげます。
A大学を目指していた生徒が、それより難易度の低いB大学を受験したい、と相談してきたらどうするんだ、と。
「まずは理由を聞く」という若い教師ですが、理由がはっきりしているなら相談に来ません。
「自分の進路だから思った通りB大学でいい、と答える」という対処案も、「Bで良いかどうか不安だから相談しているのだから、肯定されれば相談はそこで終わり。教師は何もわかってくれない、と不満が残る」とNG。
「君なら頑張ればA大学に合格する」と励ますのもダメ。生徒は「もっと頑張れと言われても……。もう頑張れないから相談しているのに……」と考えてしまいます。
その他、脅迫型、非難型、否定型、ごまかし型、命令型、忠告型など全部で9パターンを挙げ、すべてダメ、と桜木は言います。


正解は……、コーチングを応用した対応でした。ヘルプではなくサポートする技術、それがコーチング、とのこと。(詳しく知りたい人は、この本かコーチングの本を参照して下さいねー)


この「どっちに進学するかを決めなければならない」という事例は、身につまされます。私が進路に迷っていた頃が思い出させれました。といっても、私の場合は大学進学ではなく、高校に進学する時のこと。
酪農を営んでいた両親は、私が地元の農業高校に進んで後継者になることを望んでいました。かたや、隣接する中心都市にある普通高校に進んで、いずれは大学に進学する道もあります。中学校の担任の先生が、「親の希望もあると思うが、本人に決めさせてやってくれ」と私の両親にクギを刺したので、中学三年の私が自分で進路を決めなければならなくなりました。
普通高校に憧れはしますが、両親の無言の圧力をヒシヒシと感じます。いっそ、誰かに決めてもらえれば気が楽になれるのに……。
いつまでも決めない私に対し、担任の先生は意表を突く行動を取りました。ある日、「いつまで考えているんだ!」と、いきなり私の頬を叩いたのです。それが愛のムチだったのか、つい手が出てしまったのか、確かめようもありませんが、「とにかく決めなきゃいけないんだ」と、踏ん切りをつけるきっかけになりました。
ビンタはともかく(笑)、今でも真剣に向き合ってくれた先生に感謝しています。最終的に普通高校に進んだ私は、大学進学に伴って親元を離れることになりましたが、私の両親も「あの先生はいい先生だった」と言ってます。
この本を読んで、そんなことを思い出しました。
ココロにしみるマンガってあるもんですね。