鈴木敏文の「本当のようなウソを見抜く」


副題:セブン−イレブン式脱常識の仕事術
2005年1月刊  著者:勝見 明  出版社:プレジデント社   \1,300(税込)  245P


鈴木敏文の「本当のようなウソを見抜く」?セブン-イレブン式脱常識の仕事術


セブン−イレブンは日本初のコンビニエンスストアであり、店舗数も、来店者一人当たりの売上額(客単価)も業界トップを走り続ける優良企業です。私自身はコンビニ業界と何の関係もないのですが、「本当のようなウソを見抜く」というタイトルに惹かれて手に取りました。なにせ「仕事のウソ75」を解剖してくれるのですから。


はじめに出てくるのは「顧客のため」というウソです。「顧客のため」と言う人ほど、実は自分の立場を正当化するために「顧客」を持ち出す傾向がある、という鈴木氏は、社内で「顧客のため」という言葉を禁止し、「顧客の側に立って考える」ように指示しているそうです。
また、アルバイト店員にも発注業務を担当させ、明日はどんなお客様が来店するかというシミュレーションに基づいた仮説作り、仮説が正しかったかどうかの検証を繰り返している。その中で培われていくものが各店舗の財産だ、という話を初めて聞きました。


NHKのプロジェクトXでセブン−イレブン第1号店をオープンした前後の苦労話を紹介したことがありました。(もう5年も前の放送なんですね)
この番組は、無名の主人公たちの活躍でプロジェクトが成功する、というストーリーに則っていますから、鈴木氏も「群像の一人」として扱われていました。
本書を読むと、やはりこの人は普通の人じゃないな、と感じましたが、鈴木氏は「オレが頭脳だ。みんなは何も考えずに付いて来い」というタイプではありません。著者の勝見氏が指摘しているように、セブン−イレブンの経営は現場の第一線で「知」(計画や評価などの思考部分)と「行」(実行部分)を一体化させる経営です。
自らの経営センスに絶対の自信を持ちながらも、組織の末端まで自分で考えて行動することを求める。
これは、もう、毎日がプロジェクトXの繰り返しですね。