まんが パレスチナ問題


2005年1月刊  著者:山井 教雄  出版社:講談社現代新書  \777(税込)  275P


まんが パレスチナ問題 (講談社現代新書)


国際ニュースを見ていて、分かったようで分かっていない問題の一つがパレスチナ問題です。
マンガであれば、少しでも分かった気になるのではないか、と本書を手にしました。


パレスチナ問題のキーワードは、予想通りユダヤ教イスラム教・キリスト教の宗教問題でした。
パレスチナ問題の淵源をたどると、ユダヤ教のはじまり――映画で見た「モーゼの十戒」のもっと前――までさかのぼります。
キリスト教が生まれ、ユダヤ人がローマ帝国によりパレスチナを追われ(ディアスポラ:離散)、イスラム教が生まれ、十字軍が派遣され……。
長い歴史を持つこの問題が熱くなってきたのは、意外にもナポレオンが「国民国家」の思想が広まってから。それまでも不利益を被っていたユダヤ人が国民国家の中でますます差別され、迫害されるようになってからです。
ユダヤ人の大富豪ロスチャイルド家パレスチナの土地を買い上げ、入植者に作物の選択・植付けの指導、収穫の買い上げ等の援助を行いはじめました。パレスチナ全体のたった6%でしたが、後にパレスチナユダヤ人の土地だという既成事実に用いられます。第1次世界大戦時にイギリスがユダヤ人、アラブ人、フランスそれぞれに中東の土地を約束し、これがパレスチナ問題の近因になりました。
1948年5月14日、イスラエルの建国が宣言され、いよいよ、戦火が始まります。第1次から第4次までの中東戦争のたびにイスラエルは占領地域を広げ、土地を追われたパレスチナ人はテロに走ります。
何度も和平の道が探られ、平和条約締結、平和合意のたびに当事者にノーベル平和賞が贈られたりしましたが、和平反対派の一発の銃弾で元の木阿弥になりました。そして、今もパレスチナの地では、際限のない血の報復が続いています。


何が原因で何が結果か分からなくなるような複雑な問題ですが、次のような叫びが心に響きました。

ユダヤ人を迫害したり虐殺したのは、いつもヨーロッパのキリスト教国じゃないか。
オスマン・トルコやグラナダ王国なんかのイスラム国では、イスラム教徒とユダヤ人は平和に共存していたんだ。パレスチナでも1000年以上平和に暮らしてた。
ヨーロッパの国々も、ユダヤ人を差別しないで社会に同化することを認めて、共存していれば問題はなかったのに。ユダヤ人を迫害したり、虐殺したりして、人道上の問題になって収拾がつかなくなったんで、パレスチナユダヤ人問題を押しつけただけじゃないか。