なぜ顧客は逃げてしまうのか


副題:リピーターを増やす逆転の発想44
2005年3月刊  著者:ジェフリー・J・フォックス  原田 喜浩【訳】
出版社:光文社  価格:\1,470(税込)  189P


なぜ顧客は逃げてしまうのか


著者はハーバード・ビジネス・スクールでMBA(経営学修士)を取得し、現在は営業戦略とマーケティング戦略に特化したコンサルティング会社を経営しています。ビジネスを見直すために発想の転換が必要であることを、やさしく説明するのが得意のようで、日本での出版もこの本で4冊目です。


なぜ顧客が逃げてしまうかを考える前に、まず著者は顧客を「うるさい/うるさくない」「優良な客/不良な客」の視点で4種類に分類します。「うるさい優良な顧客」は大企業に多く、売上額は大きいが利益率は低い。「うるさくない優良な顧客」は、売上額は少ないが利益率は高い、という特徴がありますが、両者とも大切なお客様です。かたや、「うるさい不良な顧客」は収益率が低いのにもかかわらず、交渉が長期化したり支払いが遅かったり、ロクなことがありません。最後の「うるさくない不良な顧客」ともお付き合いを避けた方が良い、という視点からマーケティングがスタートします。


全編を通じて、顧客の心を知ることが大切であり、売る側の立場に立ってはいけない、という基本がユーモラスな事例を通じて繰り返し説明されます。
3つの演習問題には、「どうやって解決すればいいんだ!」と言いたくなるような困難な状況を設定してあります。ページをめくって答えを読むとあーらびっくり。こんな解決策を持った著者なら、どんな分野でもきっと売上をあげることができるのでしょう。
本書を読んで、アフリカに派遣された靴のセールスマンの小話を思い出しました。
消極的なセールスマンは「アフリカ人は靴をはく習慣がない。靴は売れない」と本国に報告しました。積極的なセールスマンは次のように発奮します。「アフリカ人は誰も靴をはいていない。これからは靴は売れ放題だ!」


他にも、「直接需要を主とする企業は市場に影響を与えることができるが、派生需要の製品を扱う企業は、どれほど値下げをしても需要に影響を与えることはできない」など、言われてみればその通り、という発見があちこちにありました。

発想の転換の練習にご一読あれ。