どうもいたしません


2004年8月刊  著者:壇 ふみ  出版社:幻冬舎  価格:\1,470(税込)  230P


どうもいたしません


壇ふみ阿川佐和子をコンビで見かけるようになってから随分経ちます。雑誌の対談を読んだことはありましたが、本人が書いた本を読んだことがなかったので、まず壇ふみのエッセーを手に取ってみました。


予想以上におもしろいです。
電車の中で「アハハッ」と笑い出しそうになって思わず口を押さえる、なんていう本に久しぶりにめぐり会いました。


読んでいてこんなに楽しいのは、きっと有名作家の娘で女優というステータスにも関わらず、気取らずに日常のドタバタを紹介してくれるからでしょう。マチャミ(久本雅美)の「私、女優よ!」というセリフと逆の雰囲気ですね。
私が特に「いい!」と思ったのは、「私はこんなにドジなの」とは言っても、「私はこんなに庶民的なの」とは言わないところです。逆上して大切なスカートに穴を開けてしまった失敗談のマクラには、「その夜の私は逆上からはるか遠いところにいた。オペラ、美しい夜景の見えるレストラン、極上のワイン……」と、セレブな生活の片鱗をのぞかせています。
また、撮影の都合でホテルを予約する時に「いちばん安いお部屋は? と訊けるほど、私の心は庶民的ではない」とか、一泊4万5千円という値段を知って「今さら、そんなに高いんならやめます、とも言えない」と、セレブに成りきれないやせ我慢を覗かせています。
世の中には「金持ちで何が悪いの!」という人や、逆に自分が金持ちであることを隠す人がいます。私は、両方とも好きではありません。壇ふみは、この中間にいるようで、とてもいい味を出しています。


もっと具体的に紹介したいのですが、どれほど面白いかをお伝えしようとするとネタばらしになってしまうのが残念です。
本書は日経流通新聞に月に一度連載している「ありがとうございません」というコラム約6年分に加筆修正したもの。新聞連載タイトルも著者のあわて者ぶりを象徴していて、お礼を言っているうちになぜかお詫びになってしまい、「ありがとう」+「すみません」=「ありがとうございません」と言ってしまうとのこと。
本書のタイトル「どうもいたしません」は出版社の人が付けてくれたもので、「どういたしまして」が「ありがとうございません」的な変化をした言葉です。


こんなに楽しい本を読ませていただいて、「ありがとうございません」でした。


壇ふみは年齢不詳です。
名コンビの阿川佐和子も私より年上のはずなのに、テレビで見かけるアガワサワコは、「箸が転がっても可笑しい」という雰囲気がステキです。
ふたりとも実年齢は忘れて、永遠のオトメになったと見えます。
壇ふみに楽しませてもらったので、今度は阿川佐和子を読んでみましょう。