図解版 口のきき方


2005年1月刊  著者:梶原 しげる  出版社:PHP研究所  価格:\1,000(税込)  95P


図解版 口のきき方


2003年9月に出版した新潮新書『口のきき方』は10万部に迫るヒット作だそうです。
実は私も、店員さんの声が大きいあの古本チェーン店(笑)でこの「新書版」を購入したのですが、最初の20ページくらいに目を通しただけで、そのまま放っていました。
ところが、この『図解版 口のきき方』は、あっという間に読了してしまったのですから不思議です。「(新書版に)大幅に加筆を施し、図版を加えて再編集した」、と目次に小さく断り書きがありましたが、たぶん、「大幅に加筆」よりも「図版を加えて」の方が読みやすくなった原因なのでしょう。図解のいいところは、本文を読んだ後に、もう一度文章の内容を頭の中で復唱できることですから。


本書はPART1で「こちら○○になります」「お会計のほう」「私って○○じゃないですか」などの若者言葉を取り上げ、軟弱な心理が見え隠れするのでやめた方がよいと言っています。ただし、著者は若者言葉を攻撃する頭の固いおじさんアナウンサーではありません。なんと50歳間近に大学院に入り、「若者言葉」について修士論文を書いたことがあるという、この問題の一家言の持ち主なのでした。
著者は若者言葉33語をピックアップして、よく使う人とあまり使わない人の違いを分析するため、約200人の大学生にアンケートを行いました。その結果、こうした若者言葉を使う人ほど自己主張能力が優れている。自分の言いたいことをきちんと相手に伝える力をより強く持っている、という意外な結果が得られました。
こういう若者は単に軟弱なのではなく、相手の立場を尊重して友好関係を損なわないように十分配慮をしている。しかも、自分の思いや言いたいことを巧みに伝える、という技術に長けているようなのです。
ちょっと驚きですねぇ。


また、本書には、会話を通じて人間関係を円滑にするコミュニケーション手法がたくさん載っています。
具体的なノウハウは本書を読んでいただくとして、私が感じたのは「私はあなたのことが好きです。興味を持っています。もっと話しを聞かせてください」という心構えが大切だ、ということです。
たとえば、著者が仕事で誰かと対談するとき、相手の著作のキャッチコピーには敢えて触れません。「(主人公の)○○が泊まったホテルには私も3年前に行きました」というような、本の細部についての雑談をさりげなく言うことによって、「あなたの作品はしっかり読んでいますよ」というメッセージを伝えるとのこと。
『メール道』の著者久米信行さんは、相手の個人ブログやホームページの内容をメール文の中に書くことの大切さを訴えておられますが、本書の精神と通じるものがありそうです。


本書を読み終わると、なんだか話し上手、聞き上手になったような気がしてきます。もちろん、本物のコミュニケーション上手になるには日々の実践を欠くことはできませんが、心構えができる、自信ができるとういのは、すごいことです。


新書版「口のきき方」を読んだ人にも、買ったけど読んでない人(笑)にも、もちろんまだ読んでいない人にもお薦めです。