バードケージ


2004年6月刊  著者:清水 義範  出版社:日本放送出版協会  価格:\1,680(税込)   300P


バードケージ


橘川幸夫さんの「リアルテキスト塾」というワークショップに参加しています。そこで「1000万円を1週間で使えと言われたら、どうする」という課題があり、とっさに答えられませんでした。47歳という年齢のせいでしょうか。自分の手の届かない金額のお金の使いかたを考える、空想する、ということは若者の特権なのかもしれませんね。


本書にも、1億円を3ヵ月で使いきる、というゲームをはじめたものの、使いあぐねている浪人生の主人公が登場します。1000万円でも高額ですが、1億円はその10倍。平均すると1日に100万円を「楽しんで使う」ために何に使ったらいいのか、という課題を通して、幸福とは何か、真の生きがいとは何かを考えさせられる主題です。
最初はワクワクした高価な買い物も、だんだん楽しくなくなってくることを理解した主人公が見つけたお金の使いかたは何か?……ネタばらしになるので、ここから先は読んでのお楽しみにしておきましょう。


この作品は『新基礎英語2』『新基礎英語3』に連載されたものです。
最初の対象読者が中学生ですが、青年にも私のような中年にも訴える内容です。ただ、一ヶ所だけ「中学生向け」を感じる内容がありました。それは、彼女と一緒に出かけた海外旅行先のできごと。ホテルで同じ部屋に泊まりながら、何も起こらないのです。おとな向けの小説だと、ここはふたりが自然に結びつく場面です。中学生には刺激が強いと自主規制したのでしょうか。
でも、ふたりの間にセックスがあってもなくても、この小説の主題に影響はありません。お金と幸福、という古くからの問いかけについて考える機会を与えてくれる小説でした。