たったひとつのたからもの

副題:息子・秋雪との六年
2003年11月刊  著者:加藤 浩美  出版社:文芸春秋  価格:\1,470(税込)  172P


たったひとつのたからもの


本書は、ダウン症と合併症の心臓病のため6歳で亡くなってしまった我が子の成長記録をまとめた写真エッセイです。明治生命(現明治安田生命)のCMで全国に感動を呼び、2004年10月にはテレビドラマにもなりました。


医者から「一年生きられるかどうか」と宣告され、一日一日をいとおしみながら過ごした家族三人の記録は胸を打ちます。
「無理しなくていい。頑張れなんて、絶対言わないから」
「今現在を楽しく元気に過ごせたら、それが一番大切で、喜ぶべきこと」
「夜眠る前に一つでも二つでもほほえみと共に思いだせることがあれば、人生それで充分」
などの著者のことばは、死と背中合わせの日々を過ごした経験から発せられたものです。何かに追い立てられるような気ぜわしい風潮の中で、人生について考える機会を与えてくれるかもしれません。


私も感慨深く本書を読ませてまらいました。というのは、私の娘は体重が800gにも達しないような「超低体重児」で生まれたので、生きているだけで不思議だったのです。万が一障害が発生して寝たきりになるようなことがあっても、命だけは助かって欲しい、一緒に過ごす時間をもっと下さい。と、祈るような日々が1年以上続きました。
幸い、娘は一つひとつハードルを乗り越え、来年から普通の幼稚園に通えるまでに成長してくれましたので、今は楽しく子育てしています。あんな緊張感に満ちた日々があったことを忘れてしまいそうな毎日ですが、本書を読んでいると、「あっ、あの時の気持ちと同じだ」という場面に何度も出会いました。


我が子が元気で一緒にいられることがどれだけ感謝すべきことか、ということを思い出させてくれました。ありがとうございました。