2004年4月刊 著者:日高 義樹 出版社:徳間書店 価格:\1,470(税込) 234P
先日紹介した「帝国以後」とは対照的に、「アメリカの力は相変わらず強いぞ」ということを分析している。
タイトルに「アメリカの本音」とある通り、アメリカの東部の新聞「ニューヨーク・タイムズ」の論調に影響されない一般のアメリカ国民層があり、ブッシュの「強いアメリカ路線」を支持している、とのこと。帯にも「昨今のブッシュ叩きを真に受けるな!」とある。
○通貨の交換レートはアメリカの軍事力・政治力が決める。
市場が決めるというのは幻想である。
○ブッシュが石油を高くした。
○アメリカの国際戦略は謀略である。
日本軍の真珠湾攻撃はフランクリン・ルーズベルトの謀略だった。
リンカーンも南軍を刺激して先に手を出させた。
アメリカはインディアンと400の条約を結んだが、そのうちの399をやぶった。
○イラク問題で国連安保理は崩壊した。
2004年4月出版のこの本で11月のブッシュ再選を予言して的中しているので、上記のような著者の分析には重みがある。しかし、こんな横暴なアメリカの姿を目の前に突きつけられると、いい気持ちはしない。
著者の分析では、アメリカの暴走はまだ続きそうである。しかし、アメリカが世界の財を集め、代わりにドル紙幣をバラ撒いているという現状はいつまで続くのだろう。借金が増えつづける家計は許されないが、大国アメリカなら許されるのだろうか。
先日の朝日新聞のコラムに小林慶一郎氏が「国の借金の付けはおそろしい」という歴史の教訓を書いていた。英国は1688年の名誉革命から100年の間に債務不履行を起こさなかったが、同じ100年でフランスは3度も債務不履行を起こし、これがフランス革命の内乱・恐怖政治を招いた、というのだ。(11月30日朝日新聞夕刊2面 「窓」)
小林氏が指しているのは日本政府の借金(国債)のことと思われるが、私はアメリカの世界からの借金=貿易収支赤字に置き換えて読んでしまった。
日高氏は「アメリカはまさに『カネ余り、モノ余りの新しい世界』の幕を切って落とそうとしているのである」というのだが……。