反社会学講座

2004年6月刊  著者:パオロ・マッツァリーノ
出版社:イースト・プレス  価格:\1,500(税込) 305P

反社会学講座

社会学」なんていいかげんだ。その証拠を“社会学的に”お見せしましょう、という社会学パロディー本。


社会学って、勝手なこと言ってるよな」と感じる人は、著者が冒頭に紹介している「社会学者の一般的な研究方法」を読んで腑に落ちるだろう。
曰く、「社会学にかぎっては、仮説と結論は同義です」「データの一部分だけを抽出したり、意図的に資料を誤読したりするのは、社会学研究上での重要なテクニックです」。学生時代に受講した統計学の先生が「統計を使っていくらでもウソがつける」と言っていたのを思い出す。


その実例として、ここ10年の統計しか見ないと最近凶悪犯罪が増えたとように見えるが、もっと長期の統計を見ればむしろ昭和30年代の方が荒廃していたことがわかる、ということを挙げる。
著者は「最近の若者は……」と説教を垂れる社会学者が大きらいで、「人間いいかげん史観」=昔も今も人間は等しくいい加減で適当で間抜けな存在だ、という主張を展開する。「キリスト本人は怠惰が罪などと言っていない。なにしろ本人がパラサイトシングルのフリーターだった」には、思わず笑ってしまい、深く納得してしまった。


他にも、ビジネス書の大半は著者の自慢話だから面白くない、とか、最近は読書を奨励するが約100年前には「下劣な余暇」だの「道徳形成に害がある」と決めつけられていた、などの事実ポンポン出てきて、目からウロコが落ち道徳の重しが取り払われる。
気持ちいい〜。


著者はイタリア人を母に持ち、九州男児の父の仕事の関係で幼い頃から世界中を転々としたそうだが、どうもウソくさい。なまじの日本社会の理解ではなく、子供の頃からドップリと日本社会に浸っていなければ書けないような内容がたくさんある。
例えば、「この年、ミュージシャンの尾崎豊は『15の夜』を発表し、盗んだバイクで走ってなんたらかんたら(歌詞を正確に引用するとJASRACにお金を取られるので注意しましょう)、と歌いました」とある。JASRAC……には笑ってしまうが、それはともかく、「この年」とは1983年であり、自称30歳の著者は9歳である。「世界を転々」は9歳までにやめたのだろうか。それともたまたま9歳の時に日本にいて、また世界を転々としたのだろうか。


パオロ・マッツァリーノ」なんて名乗っているけど、本当は日本人じゃないの?
もっと有名になって、第2の「イザヤ・ベンダサン」になってね。